story

世代をつなぐ、さぬきの味と心意気

水車がまわり、粉をひき、手打ちの音がひびく。それが讃岐うどんの原点にある光景です。そんな水車小屋があった頃、三野製麺所は製粉業とそうめん作りの家業を受け継ぎ、昭和32年から本格的に生うどん作りをはじめました。

当時は、まだ今のように半生うどんといったような商品もなかった時代です。しかし先代は、どうにか日持ちする美味しいうどんができないかと、「乾燥うどん」の開発に取り組みました。周りからは、「三野さん、おかしなことしよんな」と噂になったようですが、自分で機械も設計して、オリジナルの道具も作り、試行錯誤の末、三野製麺所の「乾燥うどん」は誕生しました。

これまでの讃岐うどんは、現地に足を運ばなければ食べられないもの。しかし乾燥うどんであれば、日持ちがするので贈答用としても最適です。県外や都心への手土産として人気が高く、著名人にも「讃岐うどんといえば三野製麺所」というファンが多かったという話です。しかし時代は移り変わり、世の中には半生うどんやレトルト麺などの便利な商品が数多く登場するようになりました。大量生産をするためにうどん作りも機械任せになり、コシを出すために食品添加物を入れたり、効率を重視する商品が出回るようになったのです。

しかし私たちは、余計なものをいれるうどん作りは、心が痛んで出来ませんでした。人の手で打つことにこだわり、まじりっけのない本物の讃岐うどんの味を届けたい。それが今も昔も変わらない、三野製麺所の想いなのです。機械化に頼ることなく、家族で力を合わせて作り続けている三野製麺所のうどんは、口に入れた瞬間に純粋な小麦の香りが漂い、もちもちとした本物の弾力が楽しめます。

そんな昔ながらの変わらない味は、今や海を越えて、パリの高級食材店「Workshop ISSE(ワークショップ イセ)」でも取り扱っていただくようになりました。私たちのうどんは、水車をまわしていた頃の原風景にあった、あたたかみのある、そして安心できる、本来の讃岐うどんです。そんなふるさとの誇るべき味を、今までもこれからも、三野製麺所は守り続けていくつもりです。